ある依存症の研究者!

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より良い治療を求めて
デービット・ミラーに出会った時、彼はアルコール依存症でした。彼は飲みすぎだったのでしょう。「アルコール依存なんてないんだから、禁酒だなんて意味が分からないよ。」彼との結婚など考えていなかったので、アルコール依存は彼自身の問題だと思っていました。しかしその後状況は変わりました。友情は愛へと変わり彼は禁酒を誓いました。不安材料はなくなり私たちは結婚したのです。

禁酒は長くは続きませんでした。人生の伴侶としてアルコールの問題に向き合う事は想像以上にたいへんでした。私には4人の連れ子がいたので、彼には酒と家族とどっちをとるのか問いつめるはめになりました。彼は家族を選びアルコホーリクス・アノニマスに通い始めました。しかしそれは長い戦いの始まりに過ぎなかったのです。私は飲みさえしなければ大丈夫だと思っていましたが違いました。アルコールを我慢することで、飲んでしまったのと同じくらい不快な症状がアディクション患者にはあるのです(現在のアディクション治療が注目している点です)。

アルコールが抜けた状態の彼は、不機嫌でストレスに敏感でイライラしていました。彼は音に過敏で(私の子供たちは耳が悪く、わが家はうるさい方だったので)家族生活は耐えられないものでした。彼はときどき家を出て、わたしは子ども達と家に取り残されてしまいました。いっそ彼が酒を飲んでいる時の方がましだと思ったこともありました。

それでも私は彼を尊敬していました。酒を我慢することが彼にとってどれほどつらいことかを見ていたからです。私は彼を支えたし、彼も家族に対しできるだけの事をしてくれました。しかし時に耐えきれず飲んでいました。そんなこんなで禁酒を継続した結果、3年間しらふを保つことができました。そして時が経ち今年で30年維持できています。

彼が30年間成功したのは、私たちが後にアディクション患者の断薬からくる症状と名付けたものの管理のたまものです。どのミーティングでも、カウンセリングでも、本でもその難しさを教えてはくれませんでした。誰もこれらの症状が回復の一部として存在することを教えてくれませんでした。誰もこの症状への対処法を教えてくれませんでした。要は誰もこれを知らなかったのです。

私たちは彼のしらふこそが生み出すこの症状に対し試行錯誤を繰り返してきました。例えば症状は土曜日に悪化することに気づきました。複数の原因が思い当たりました。土曜日は夕飯が遅く寝るのも遅くなる日です。朝は何も食べずにAAミーティングに出かけ、そこでコーヒーを飲みドーナッツを食べタバコを吸います。AAから帰宅すると、掃除機の音、子供たちの演奏、携帯電話の呼び出し音など一般的家庭にある混乱を目にします。ノイズに対処する唯一の方法は、家をあとにするという妻を怒らせる方法だけです。彼が落ち着いた気分で帰宅しても、家庭はそれを受け止める状態ではなかったのです。

私たちは結婚生活を破たんさせる気はさらさらなかったので、自分たちで調べる道を選びました。方法はシンプルでした。朝血糖値を上げるためにベッドから出る前にオレンジジュースを飲ませました(当時はそれが脳内伝達物質を一時的に変えていたとは分からなかった)。またAAミーティング前に朝食を食べ、ドーナッツとコーヒーは控えるようにしました。効果はてきめんでした。私は彼の帰宅時には家庭を静かに保つようにしました。デービットも土曜日の帰宅後に家事を手伝ってくれるようになりました。しかし状況がひどい時には逃げるのも有りにしました。

徐々に私たちはコツをつかんでいきました。家庭を静かにすることができるようになりました。本人の努力は必要ですが、一人ではうまくいかなかったでしょう。またアルコールの不在によって残された空しさの代わりに創造的で楽しい活動が必要でした。当時は分かりませんでしたが、全て脳内伝達物質(エンドルフィン・エンケファリン・セロトニン・ドーパミン・GABA)を改善する行動でした。

続けていくうちに私たちの絆は深まりました。分かったことは長期的な禁酒は難しいということです。それは意志の力とセルフコントロールの問題だけではありません。酒をやめて生きていくという単純な話ではありません。アディクションには生理学的・生化学的に関係する症状があるのです。リラプスを起こしてしまう時はしらふでいるのが嫌なわけではなく、どうしていいかが分かっていないのです。

この試行錯誤で得たものを私たちはシェアすることにしました。リラプス予防法としらふでいることによる苦しみへの対処法を知らずにいる人を救うことにしました。そのためにより良い方法を研究することにしたのです。

数年後、デービットは学校に通いアディクションカウンセラーになりました。幸いにもリラプス予防に興味を持っていたテリー・ゴルスキと共に働くことになりました。テリーは彼がポスト急性離脱症状と名付けたものを研究していました。デービットの症状は彼だけの苦しみではないと知り救われたものです。皆そうだったわけです。

その後テリーとデービットと私で、「人生をやり直す:アルコール依存回復ガイド(のちに薬物依存回復ガイドと改題」という本を執筆しました。この本では私たちが実際に歩んできた苦しい道のりを書かせてもらい、多くの人の役に立てたと思います。

またテリーと私で「しらふでいること:リラプス防止ガイド」という本を出しました。この本は1986年以降アディクション関係の人々に広く受け入れられました。理由は、依存症には回復にあたり困難な症状があり、それは人格や努力に問題があるわけではないということを示したからです。

この本では、ポスト急性離脱症状は薬物使用による神経系のダメージにより起こるので、脳と体を回復させることが大切だと書きました。しかしデービットの経験を通じて分かっていたのは、この症状は全然消えないということでした。彼は10年以上も対応策を繰り返しながら苦しみが完全に癒えることはなかったのですから。

その後デービットと私とで治療プログラムを開発しましたが、クライアントからは禁酒後何年たっても症状に苦しんでいるという報告がありました。我々はリラプス防止に特化していましたが、我々の研究仲間たちはこの症状に手をやいていました。ある種の人達にとって回復はかなり難しいという事がよく分かりました。したがって、我々はリラプス防止プログラムを改良しフードアディクションなど様々な問題に対応できるようにしました。次に出した本は強迫性過食障害のリラプス予防「肥満スパイラルからの脱却」でした。

我々がポスト急性離脱症状について広める中で分かったのは、患者の多くは過食やアルコール・薬物を初めて手にする以前からその症状を経験したことがあるという事でした。できる限り思い出してもらった結果、その不快な症状を自分で何とかしようとしたくてアルコールや薬を使い始めたと言うではありませんか。

デービットは確信しました。我々がポスト急性離脱症状と呼んでいたのは薬物を止めた事による症状ではなく、元々あった症状を薬物などで紛らわしていた、それがまた出てきただけのことだったのです。彼はまたこの症状と、音・光・触れることへの過敏症状との関係についても確信しました。彼はこの刺激過敏(ハイパーセンシティビティー)についても勉強しました。彼は子供の頃からそれに悩まされていたので、そちらにも興味があったのです。

デービットは、慢性リラプスではこの刺激過敏があることにも気づきました。またADHDに苦しむ人達もこの症状を持っていて、かつアルコール・薬物依存が多いということも発見しました。彼自身もADDと診断されていましたし。後に科学者ケネス・ブラム博士が「オーバーロード/ADDと依存する脳」という本を出版しています。

研究を通じて、アディクションからの回復にある人の多くが診断はされていないがADDである事が分かりました。最終的に、トーレット症候群、衝動強迫性障害、うつ病、行動障害には人をアディクションに仕向ける何かしらの関連障害があると分かりました。全てこれらの状態は神経学的および生化学的なものであり、脳内化学物質のアンバランスと関係しています。アディクションに関する研究を分析すればするほど、いかにその本質と扱われ方に差があるかが分かりました。

アディクションが脳内化学物質に関係するのなら、より効果的で自然な方法を見つけなければと考えました。それから多くの代替療法を研究しました。栄養療法、耳介療法、鍼治療、脳波バイオフィードバック(ニューロフィードバック)などです。

デービットはフェニルアラニン、チロシン、グルタミン、ビタミンを配合した錠剤を試しに始めてみました。結果は驚くべきものでした。彼は救われたのです。脳内化学物質はアミノ酸・ビタミンにより生成されますし、ADHDは脳内伝達物質に関係しているので理論通りなのですが、筋書き通りに効果が出たのです。デービットはアミノ酸をアディクション仲間に勧め、良い結果を出しました。適切な配合のアミノ酸とビタミンはアディクション患者の脳内神経バランスを改善し渇望から回復させたのです。

最終的に私たちは、15年にわたり経静脈アミノ酸療法でアディクションに著名な効果を出しているメキシコのクリニックにたどり着きました。この施設でのアディクションへのすばらしい効果を見ているだけで数か月が経ってしまいました。

現在では米国でもアディクションに対する経静脈アミノ酸療法を提供する施設も多数あります。私たちの見解としては、これが最も効果的な治療法です。この方法により比較的少ない不快感で、ヘロイン、アルコール、コカインのデトックスを達成できた患者を診てきました。数日以内の著効例も診てきました。アミノ酸療法についての最も注目すべきことの一つは、多くの患者が依存している物質すべてに対して渇望を感じなくなるということです。さらに皆今までにないような満足感を感じていました。いかに今までアミノ酸・ビタミンが不足していたかという事です。

ケネス・ブラム、チャールズ・ガント、ジュリア・ロス、タメア・シスコ、ジェイ・ホルダーらとの連携により多くの症例を研究し、これがアディクションの治療において最高の方法であると確信し、より多くの患者のためにこの療法を拡めることにしました。

より効果的な治療法を探している中で、神経学的な治療分野が効果を出していることも知りました。米国内の薬物裁判所は、オリキュロセラピーと耳鍼治療は単独で従来の方法よりも効果的であると認めています。脳波バイオフィードバック法は、脳波パターンを変更する効果があると認められています。これにより患者は上手にリラックスしたり集中したりができるようになります。また治療マッサージの効果についても広く知られています。

アディクションの物質的症状への治療法を追い求めているうち、心理学的・精神的なアプローチの重要性を見落としていきました。メキシコのクリニックでは経静脈アミノ酸による脳内化学物質の改善に重点を置き、カウンセリングプログラムはありません。それでも患者満足度は高いのです。その結果、多くはフォローアップ治療を受けることを勧められたにも関わらずほとんどしませんでした。リラプスして戻ってきた時でさえフォローアップではなくアミノ酸療法を求めてきたのです。脳波バイオフィードバック、栄養療法、鍼治療を活用したプログラムにおいても同様の事態が起きています。感情的、精神的なニーズに対処することなく脳内神経伝達物質のみを改善する治療は、それ単体では不完全であると気づきました。

近年アディクションが生化学的に解明されるにつれ、処方薬による治療も増えてきています。薬がアディクション生理学に使われる事は以下の理由により間違っています。

•ほとんどの場合、薬は根本的な問題を改善しません。

•ときに問題となる副作用があります。

•それ自体新しいアディクションになる可能性があります。

•最も重大なことは、患者が処方薬を服薬しながら薬物のリラプスを起こした場合その相互作用は最悪死に至る危険性を持っているということです。

以上の理由から、私たちはアディクションの治癒において処方薬はお勧めしません。それは最後の手段として注意深く扱うものです。

この本は私たちが完全かつ永続的なアディクションの回復について、これまでに学んだことの集大成です。私たちは、アディクションからの回復がいかに困難であるかを研究してきました。以下に私たちの研究の要点を示します。

•アディクションは基本的に脳の疾患であり、生化学的アンバランス状態がリラプスの原因となる慢性離脱症状を起こしています。

•脳内伝達物質の回復なしに断薬した場合、多くは苦痛、不安、混乱、抑うつで苦しむことになります。(実際アルコール依存症回復者の25%が最終的に自殺をすることが報告されています)

心理的、社会的、精神的のみにアプローチする方法では成功率は20%未満です。理想的なアディクションの治療法は生化学的なアプローチに、カウンセリング・患者教育を組み合わせたものでしょう。

•脳を回復させるための代替療法が優れた効果を出しています。特に経静脈あるいは経口アミノ酸療法は70~75%の成功率を示しています。しかし残念なことにまだあまり知られていません。

•脳の回復においては、感情的、精神的なサポートを併用する必要があります。

•セルフケアとリラプス防止は、しらふ状態を快適に維持するために必要です。

私たちは長い間探してきたものの誕生を目撃しています。現在、治療は新しい時代に入っています。この分野はこれから飛躍的に進歩するでしょう。アミノ酸療法、脳波バイオフィードバック、オリキュロセラピー、栄養療法、カウンセリング、ライフマネージメントスキルの併用はアディクションからの回復を可能にします。それはリラプス予防に留まらず健康で快適なしらふ状態を実現します。

きっとあなたは良い治療法にまだ出会っていないアルコール依存症者か薬物依存症者なのでしょう。おそらくあなたはアディクション患者の親か配偶者か子供か友人であり、あなたの愛する人に回復の見込みはないとひそかに絶望しているのでしょう。あるいはあなたはアディクションの専門家であり、あなたの努力・知識・技能をもってしても患者はリラプスを繰り返しているのでしょう。この本があなたの人生の扉を開けてくれることを祈っています。
一般社団法人日本アディクションプロフェッショナル認定協会(ジャクバップ)
グリーンPCTカイロプラクティック