■ブラジルの法が患者に検査されていないがんの「薬」を使う権利を与える

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Brazilian law grants patients right to use untested cancer ‘drug’
Heidi Ledford 15 April 2016
http://www.nature.com/news/brazilian-law-grants-patients-right-to-use-untested-cancer-drug-1.19756

しかし研究者らはそれに効果があるという現実的根拠はないと警告

ブラジルの大統領Dilma Rousseffがこの国の医薬品規制機関を回避して臨床試験が行われたことのない根拠のない「魔法の薬」をがん患者が使えるようにする法案に署名した。この法は、ブラジルの科学大臣がこの化合物、合成ホスホエタノールアミンが実験室での研究でがんに効果はなかった、と発表した数週間後の4月14日に発効した。São Paulo大学のがん研究者Paulo Hoffは「非常に残念だ」という。「このことは規制機関の土台を崩し、役にたつかどうかわからない副作用も不明の何かを使うことを合法化する」。

Rousseff大統領はこの法案について相当な政治的圧力を受けていた。財政上の不正についての弾劾の可能性に直面し、議員らがこの化合物へのアクセスを声高に要求していた。この法案はがんと診断された人は誰でも、処方無しでこの薬物を入手できるようにする。

しかし現時点では患者がこの錠剤を手にするのは難しい。この法律ではこの化合物はヒトの医薬品を作ることが認められた施設で製造される必要があるが現在そのような施設でホスホエタノールアミンを作っているところはない。それなのにHoffによると彼の病院にはこの薬を使用しているという患者が定期的にやってくる。「私は彼らがどこからそれを入手しているのかわからない」という。

ここ数年、患者らはSão Paulo大学の化学研究室からこの化合物を得ていて、大学が配布を中止しようとしたら数千の患者が訴え、一部の裁判所が大学に患者にホスホエタノールアミンを与えるよう命令した。しかしその研究室は医薬品製造は認められていない。

この混乱に対応して科学技術大臣は約1000万レアル(290万米ドル)でこの化合物の研究を行った、培養細胞への毒性はなかったががん細胞にも影響はなかった。動物実験は現在実施中である。

HoffはSão Paulo州からの資金提供を受けて数週間で結果を出そうとしている。数千人の患者が既に使用している以上動物実験の結果を待ってはいられない。最初に現在使用中の量が安全かどうかを10人で調べ、その後有効性を調べる。彼は約6ヶ月で結果を出すと予想するが、一部の患者はこの薬の効果に疑問を提示するデータは受け容れないだろうとも予想する。この薬を使用している彼の患者の一人は「私はこれを使用し続けたいのです、もう信仰の問題です」と言った。

一方でブラジル科学技術省の研究開発政策長官Jailson de Andradeは患者の報告について懸念している−早期の、治療可能ながん患者が標準療法を拒否してこの化合物を使用している。「私達は全ての人に、正式な治療を止めないよう強く促す」

(アメリカのレートリルと同じ。人類って学習しないんだ。統合医療と称してこういうのを目指している人たちは我が国にもいる。健康食品も同じ。効果のないものを効果があると宣伝するのは害があるんだよ。裁判や政治やマーケティングで事実が変えられるわけではない。そして大学の研究者が加害側で絡んでいる。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20151126#p3
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20151125#p10

Scienceでも

ブラジルの大統領が無法ながん錠剤を合法化する法案に署名

Brazil president signs law legalizing renegade cancer pill
By Herton EscobarApr. 14, 2016 ,
http://www.sciencemag.org/news/2016/04/brazil-president-signs-law-legalizing-renegade-cancer-pill

(こちらは写真がSão Paulo大学の実験室の様子。許可無くがん患者に合成ホスホエタノールアミンを20年も供給してきた、という説明文。20年前のブラジルの研究室の機器で現在の医薬品の製造に必要な水準になるわけはないのだけれど)

大統領の署名に科学者らは軽蔑の言葉を浴びせている。ブラジルの臨床がん学会長Gustavo Fernandesは「疑似科学による救世主願望に感化された政治的決定で、この問題の最悪の取り扱いである」

この「がん錠剤」騒動は昨年ブラジルのメディアがこれでがんが治ったと主張する患者を取り上げたことで巻き起こった。化合物は1990年代初めにSão Paulo大学の分析化学者Gilberto Chiericeが開発したもので何の規制上の承認も臨床知見もないまま何年間にも渡って無料で患者に配布してきた。2014年6月に大学がChiericeの行為を止めさせようとしたが15000人以上が大学を訴え、錠剤の供給を継続することを強いた。一方活動団体は政治家に圧力をかけ合法化を迫った。保健、産業、科学の担当者は大統領に法案に反対するよう助言したが、大統領は政治生命が危うい時期で、事務所が署名を薦めた。

新しい法律ではこの物質は「認可機関」で製造・販売されなければならない。4月1日にSão Paulo大学は裁判所の命令で薬を作り続けていたChiericeの研究室を閉鎖した。現在この物質が正規に合成されているのは臨床試験のために州政府から製造を委託されている民間ラボのみである。このラボではChiericeらの特許のある方法で作っており、国際的にダイエタリーサプリメントなどとして販売されている合成ホスホエタノールアミンとは違うとChiericeらは主張している。

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